Abercrombie & Fitch(A&F、俗称アバクロ)が今年日本に初上陸し、直営店を銀座に出すらしい。アメリカでのブランドイメージを知っている者としては、これにはどうも納得がいかない。銀座は「大学生向けのカジュアルの王道」というA&Fのイメージに合わないのだ。この違和感は、「値段のわりに質がよくまた色使いがきれいで、ミドルクラスのヤング・プロフェッショナルが週末に自然食を扱う高級スーパーに行くときに着る」というイメージのJ.CREWの路面店を原宿駅近くで見つけたときにも感じたものだ。
アメリカにいた頃、Gapはティーンの服、A&Fは大学生御用達、Banana Republic(俗称バナリパ)はアウトドア、L.L.Beanは防寒着、Lands' Endはベーシック、J.CREWは上品なカジュアル(Lands' Endから独立したデザイナーが立ち上げたブランド)、Brooks Brothersはフォーマル、Polo Ralph Laurenはカジュアルとフォーマルの中間(Brooks Brothersのバイヤーが立ち上げたブランド)と、アメリカンブランドはほぼ完全にカテゴライズすることができた。
ところが日本に帰って来ると、テレビドラマ「Sex and the City」のごく最初の頃のエピソードで理想的な登場人物を形容する際に「J.CREWのカタログ(カジュアルウェアの着こなしの教科書として認知されていた)から抜け出てきたような」という表現が使われていたはずのJ.CREWが安っぽく売られていたり(日本のJ.CREWの店員、つまりレナウンの社員数人にアメリカでのブランドイメージを伝えたところ、皆一様にビックリしていた)、メーン州の田舎発の防寒着でしかないL.L.Beanがオシャレなイメージを打ち出していたりしていた。ブランドイメージが日米で全く異なるのに愕然としてしまった。
一時期のユニクロはその棚の配置にしてもカタログにしても、J.CREWの完全なコピーだった。ファーストリテイリングにうまく真似できたことが、ライセンス契約を結んでいるレナウン&伊藤忠商事にはできなかったのだ(勉強不足なのか、やる気がないのか、そもそも能力がないのか、理由は特定できないが)。彼らがJ.CREWのイメージ戦略に失敗したツケが、ブランドの昨年から今年にかけての「不採算による撤退」という結果を招いた一因なのは否めない。
J.CREWが撤退していなければ、アメリカのオバマ大統領の就任式で夫人と子供が身につけていたことが日本でも大きく報道されたことから、爆発的な人気を呼んだかも知れないのに。つくづく残念だ。これに関連して、私がよく行っていたGeorgetown Park MallのA&F(ちなみにこのお店で流れていた音楽はかなりよく(カントリーのフレーバーがあるアコースティックなもの)それを聞き続けたいがためにそのお店に長くいたこともあった)で当時のクリントン大統領がクリスマスショッピングをしたというニュースがあったり、私がアフタークリスマスセールのためFriendship Heightsにあって隣接しているGapとバナリパに行った数時間後、生前にお忍びでよくワシントンDCに来ていたダイアナ妃がどちらかでジーンズを買ったというニュースがあったりしたことを思い出した。
これから日本で展開するA&Fには、J.CREW(正確にはレナウン&伊藤忠商事)が犯した誤ちを繰り返さないでもらいたいものだ。
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